育成就労の日本語要件は2段階です。就労を始める前までにA1相当(試験に合格するか、100時間以上のA1相当講習を受ける)、終了までにA2相当(分野別運用方針の表記はA2.2相当以上)の試験合格が求められます。育成就労計画の認定申請の時点でA1相当の合格を証明できれば、入国後講習の下限は320時間から220時間に下がります。
「A1」「A2」は日本語教育の参照枠のレベルで、JLPTのN5・N4とは別のものさしです。この記事では、育成就労法施行規則(2027年4月施行)・運用要領・分野別運用方針と試験実施機関の公式ページをもとに、いつまでに・どの水準が・どの試験で求められるかを整理します。入国後講習の時間数は育成就労の入国後講習、入国前の教育を担う機関はLPKとは?をご覧ください。
育成就労の日本語要件は?A1・A2はいつまでに必要か
| 段階 | 求められる水準(一般的な分野) | 試験・代替 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 就労開始前まで | A1相当以上 | JFT-Basic、JLPTのN5などの合格。または、認定日本語教育機関等のA1相当講習を100時間以上受講 | 基本方針 第三3(3)/施行規則 第13条第2項第7号ヘ/分野別運用方針 |
| 1年経過時まで | A1相当以上 | 上と同じ試験。すでに合格を証明できていれば、この評価は不要。不合格でも育成就労は継続できる(入管庁「育成就労制度の関係省令等について」) | 施行規則 第14条第1項第1号ロ・第2項第2号 |
| 本人意向の転籍時 | A2.1相当以上 | JFT-Basic(A2.1以上)など、分野別運用方針で定める試験 | 施行規則 第27条第1号/分野別運用方針 |
| 育成就労の終了まで (特定技能1号と同じ水準) | A2.2相当以上 | JFT-Basic、JLPTのN4など | 施行規則 第13条第1項第2号・第14条第1項第2号ロ/分野別運用方針 |
水準は入管庁「分野別運用方針の主要な記載事項」、試験の例は同庁「育成就労制度の概要」(令和8年7月改訂)によります。
施行規則の第13条・第14条は、「A1」「A2」という語を使っていません。終了までの目標を「本邦での生活に必要な日本語能力及び従事させる業務に必要な日本語能力を有していることが試験その他の評価方法により証明されること」(第13条第1項第2号)と書き、入国後講習の基準(第13条第2項第7号ニ・ヘ)と1年経過時までの評価(第14条第1項第1号ロ)では、同じ能力を「一定程度」有していることと書き分けています。運用要領が、前者を原則A2相当、後者を通常A1相当と説明しています。試験と水準を定めるのは、分野ごとの分野別運用方針(令和8年1月23日閣議決定)です。
A1・A2とはどの程度か?N5・N4・JFT-Basicとの関係は?
日本語教育の参照枠(文化審議会国語分科会、令和3年10月12日)は、CEFRを参考に、熟達度をA1〜C2の6レベルで示します。全体的な尺度の記述は次のとおりです(抜粋)。
- A1:「もし、相手がゆっくり、はっきりと話して、助け船を出してくれるなら簡単なやり取りをすることができる。」
- A2:「簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄についての情報交換に応じることができる。」
分野別運用方針は、「A2.1」「A2.2」という区分を使っています。入管庁「育成就労制度の概要」は、A2.2を参照枠A2相当のレベル、A2.1を「日本語教育の参照枠A1に到達し、かつA2.2到達に向けて学習が進展しているレベル」と説明しています。
試験実施機関の公表は次のとおりです。
- JFT-Basic(国際交流基金日本語基礎テスト):2026年8月から、A1・A2.1・A2.2の3水準を判定します。10〜250点のうち、145〜174点がA1、175〜199点がA2.1、200〜250点がA2.2(A2)です。2026年7月までの受験分は、200点以上の場合のA2.2の証明にしか使えません。
- JLPT(日本語能力試験):2025年第2回(12月)試験から、合格者の成績書類にCEFRレベルが参考表示されています。N5は総合得点80点以上でA1、N4は90点以上でA2です。話す・書く力は対象外です。
特定技能1号の日本語要件(上陸基準省令 特定技能1号の項 第1号ニ)も、基本方針はA2相当以上を基本とし、一般的な分野の分野別運用方針はA2.2相当以上としています。育成就労制度Q&A(Q75)によれば、育成就労から特定技能1号へ移るときは、技能実習2号の良好修了者のような免除はなく、日本語の試験の合格が要件です。
入国前にA1相当の試験に合格していないと、入国できないのか?
一般的な分野では、入国できます。育成就労制度Q&A(Q56)は、入国時に求められる日本語能力の要件はないとしています。Q67も「日本語のA1相当試験に合格しなければ入国できないということはありません」としています。法令上の期限は就労開始前です。合格していない人は、入国後講習などでA1相当講習を100時間以上受けます(施行規則 第13条第2項第7号ヘ)。その場合も、基本方針は、育成就労の開始から1年経過時までの合格を求めています。
それでも、入国前の水準が問われる場面が2つあります。認定申請の時点でA1相当の合格を証明できると入国後講習の時間が減ること(次の節)と、分野別運用方針がより高い水準を定めている場合です。後者について、当校が確認した例は次の2つです。受け入れる分野の分野別運用方針を必ず確認してください。
- 介護:育成就労を開始するまでにA2.2相当以上。分野別運用方針は受け入れる外国人を「試験に合格した者」とし、講習の受講を挙げていません。入国後講習の日本語科目にも、240時間以上(B1相当以上を証明できれば80時間以上)という上乗せがあります(入国前講習に応じた一部免除あり)。
- 鉄道(運輸係員):分野別運用方針は、入国時にA1相当以上の試験に合格していること、就労開始までにA2.2相当以上、終了までにB1相当以上を求めています。運用要領別冊の別表は、入国時までの試験にJFT-Basic(A1相当以上)またはJLPT N5以上、終了日までの試験にJLPT N3(104点以上に限る)以上を挙げています。
入国前の水準で、入国後講習の時間はどう変わるのか?
入国後講習の総時間数は、A1相当の試験に合格しているかどうかで変わります(施行規則 第13条第2項第7号)。
- 合格していない場合:320時間以上(過去6か月以内に160時間以上の入国前講習を受けていれば、160時間以上)。うち100時間以上は、認定日本語教育機関の「就労のための課程」によるA1相当講習です。
- 合格している場合:220時間以上(110時間以上の入国前講習を受けていれば、110時間以上)。日本語の科目は、認定日本語教育機関による講習でなくてもかまいません。
運用要領によれば、合否を確認するのは育成就労計画の認定申請の時点です。認定後、入国までに合格した場合は、A1相当講習が不要になり、軽微変更届出書を出します。入国後講習の途中で合格しても、220時間にはできません。当校の考えでは、受験の時期は認定申請から逆算して決めるのが確実です。
A1相当講習と次のA2目標講習には経過措置があり、当分の間、登録日本語教員による授業(生徒20人以下など)を100時間以上履修した場合も、基準を満たすものと扱われます(施行規則 附則第3条)。
受入企業(育成就労実施者)は何を負担するのか?
- A2目標講習の機会:認定日本語教育機関の「就労のための課程」で100時間以上履修できるよう、必要な措置を講じます(施行規則 第13条第2項第8号。目標を達成済みなら不要)。運用要領は、本人の希望に応じて講習費用を負担し、受講環境を整えることを求めています。受講時間を労働時間とすることは義務ではありません。
- 試験を受けさせること:1年目の試験と目標の試験を受けさせる義務があります。運用要領は、受験手数料や交通費を本人に負担させず、育成就労実施者または監理支援機関が負担するとし、受験の時間は労働時間に当たるとしています。
- 目標に届かなかったとき:終了日までに目標を達成できない場合は、期間の延長が認められることがあります(施行規則 第35条。基本方針は一定の要件の下で最長1年)。
運用要領は、3年間にA2目標講習の受講機会を与えなかった場合、認定の取消し等の対象になるとしています。入管庁は、講習を提供できる日本語教育機関の一覧表を公開しています。
送り出し機関に、日本語教育の何を確認すべきか?
ここからは法令の要件ではなく、当校からの実務上の助言です。次の6点を書面で確認してください。
- 総時間数と期間— 合計何時間か。時間割と出席の記録を出せるか。
- 対面かオンラインか— オンラインの時間数、1クラスの人数、だれが教えるか。
- 出国前の到達目標— A1かA2か。どの試験をいつ受けるか。認定申請に間に合うか。
- 合格実績と証明— 合格証明書や判定結果通知書の写しを出せるか。
- 入国前講習として扱えるか— 科目と時間数の記録があるか。監理支援機関からの委託など、施行規則の実施者の条件に当たるか。
- A1相当講習に当たるか— 認定日本語教育機関の課程か、登録日本語教員の授業か。どちらでもなければ、時間数が多くてもA1相当講習にはなりません。
HINATAの場合
当校(PT. LPK HINATA Indonesia)の日本語教育は、全対面・全寮制で800時間(6か月)です。到達目標はA2を標準とし(制度上の要件は、一般的な分野でA1相当)、JLPT N4を必須としています。教育の内容は教育ページ、授業を現地で確かめる方法は送り出し機関の現地視察をご覧ください。
出典
- 外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律(2027年4月1日施行の条文)第8条・第9条 ― e-Gov法令検索
- 外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律施行規則(令和7年法務省・厚生労働省令第4号、2027年4月施行。令和8年省令第3号による改正後)第13条・第14条・第27条・第35条・附則第3条 ― e-Gov法令検索
- 「特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する基本方針及び育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する基本方針について」(令和7年3月11日閣議決定)第三1(3)・第三3(1)(3)・第四2(1) ― 出入国在留管理庁(PDF)
- 特定技能制度及び育成就労制度の分野別運用方針(令和8年1月23日閣議決定) ― 出入国在留管理庁(ページ)/分野別運用方針の主要な記載事項(PDF)/別紙1 介護(PDF)/別紙5 建設(PDF)/別紙11 鉄道(PDF)
- 出入国在留管理庁・厚生労働省 編「育成就労制度 運用要領」(令和8年8月)第4章第2節(第2 育成就労の目標:4-16〜4-18頁、第3(8)講習・(9)日本語の目標達成に必要な措置:4-39〜4-51頁、第5 技能及び日本語能力の評価:4-53〜4-57頁) ― 第4章(PDF)
- 外国人の育成就労の適正な実施及び育成就労外国人の保護に関する法律施行規則の規定に基づき介護分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準等(令和8年3月31日)第1条第3号 ― 出入国在留管理庁(PDF)
- 法務省・厚生労働省・国土交通省 編「特定の分野に係る育成就労制度運用要領 ―鉄道分野の基準について―」(令和8年6月)本文・別表 ― 本文(PDF)/別表(PDF)
- 出入国在留管理庁「育成就労制度の概要」(令和8年7月改訂) ― PDF/同「育成就労制度の関係省令等について」 ― PDF
- 出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」Q56・Q63〜Q69・Q75 ― ページ
- 出入国在留管理庁「日本語教育機関の講習提供状況一覧表(令和8年6月時点)について」 ― ページ
- 文化審議会国語分科会「日本語教育の参照枠 報告」(令和3年10月12日)「3 全体的な尺度」(PDF31枚目) ― 文化庁(PDF)
- 国際交流基金「JFT-Basicとは」(5. 判定する日本語能力水準、6. テスト結果の通知)・「よくある質問」(問8) ― JFT-Basicとは/よくある質問
- 日本語能力試験 公式ウェブサイト「CEFRレベル参考表示」「N1~N5:認定の目安」 ― CEFRレベル参考表示/認定の目安
- 出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(平成2年法務省令第16号)特定技能1号の項 第1号ニ ― e-Gov法令検索
※本記事は2026年10月7日時点で公表されている資料に基づいています。制度の詳細は変更される可能性があります。個別の申請にあたっては最新の手引きと専門家にご確認ください。
HINATA Indonesia は外国政府認定送出機関(OTIT No. IDN000507)です。創業2年半で約300名を送り出し、失踪は0件。日本語は法令要件のA1ではなくA2を標準にしています。費用は費目をすべて公開し、ブローカーは使いません。
育成就労では、A1相当の試験に合格し入国前講習を受けて送り出すため、貴団体の入国後講習は最短110時間です(不合格・入国前講習なしの320時間と比べ、1人あたり約29万円の差)。当校の入国前講習は800時間です。
この記事で参照した公式情報
| 機関 | 資料・ページ |
|---|---|
| e-Gov 法令検索 | e-Gov法令検索 |
| e-Gov法令検索 | |
| e-Gov法令検索 | |
| 出入国在留管理庁・法務省 | 出入国在留管理庁(PDF) |
| 出入国在留管理庁(ページ) | |
| 分野別運用方針の主要な記載事項(PDF) | |
| 別紙1 介護(PDF) | |
| 別紙5 建設(PDF) | |
| 別紙11 鉄道(PDF) | |
| 第4章(PDF) | |
| 出入国在留管理庁(PDF) | |
| 本文(PDF) | |
| 別表(PDF) | |
| ページ | |
| ページ | |
| 国際交流基金(JFT-Basic) | JFT-Basicとは |
| よくある質問 | |
| 日本の省庁(www.bunka.go.jp) | 文化庁(PDF) |
| 日本語能力試験(JLPT) | CEFRレベル参考表示 |
| 認定の目安 |
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